島根大学附属図書館のブログ

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企画展「戦争と平和~」こぼれ話

ただいま開催中の企画展「戦争と平和を考える2017」、皆さん観ていただきましたか?

今回は、この企画展を開催するにあたってのこぼれ話を。

まずは、1冊の本を紹介します。

曽田幸広編『北支転戦記:梅田房雄従軍日記』

本の著者である故・梅田房雄さんは、1914(大正3)年島根県那賀郡杵束村田野原に生まれ、1937(昭和12)年7月末に歩兵第21連隊に応召され、8月1日に出征しました。

彼は、故郷を出てから出征中戦地で毎日手帳に日記を書き、それは一日も欠かすことなく翌年8月末に病のため宇品へ帰還するまで続きました。

彼はその後、1939(昭和14)年6月25日に亡くなりますが、この日記は遺族によって大切に保管されていました。これを彼の弟・梅田敏男さんが文字を起こし、1970(昭和45)年兄の三十三回忌を記念して一冊にまとめたものが『北支転戦記』です。

ぜひ、手に取ってお読みください。

梅田青年と同じ日に、松江市雑賀町から山村栄吉さんも中国戦線へと出征しました。

彼も手帳を記しており、中国北部にある現在の山西省太原市で戦死しましたが、その手帳は奇跡的に戦友が持ち帰り遺族の手に渡りました。現在は、雑賀町の先人記念館にて保管されています。

手帳によると、山村さんも梅田青年と同じ戦場で戦っており、『北支転戦記』と照らし合わせて読むと、当時の状況が克明に伝わってきます。日記の最後の記述は1937(昭和12)年11月8日で終わっています。この二人の兵士は、出征した日も同じでしたが、共に戦死・戦病死という無残な結果で一生を終えることになったのでした。

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今回、展示室奥に飾ってある幟(のぼり)は、山村さんが出征された際に家の前に多くたてられたもののひとつで、こののぼりのもと多くの町内や知人に見送られたそうです。当時、入営(=兵役につくこと)は名誉なことで、「祝入営」と書かれています。

たくさんあったものの中で、ご遺族はもう捨てるからということだったので、きれいなものを二つほど、雑賀公民館(現在は雑賀町の先人記念館に所蔵)に寄贈されたそうです。

「祝入営 陸軍歩兵 山村栄吉君 相生町某氏」と書かれてあります。

こちらもぜひご覧ください。

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