島根大学附属図書館のブログ

島根大学図書館のサービスや催し、身近な出来事などについて、図書館スタッフが写真と共にご紹介します。 

企画展「戦争と平和~」こぼれ話<その②>

皆さまいかがお過ごしでしょうか。

今日も雪の降る中、多くの方にご来館いただいています。

展示室にもぜひ足をお運びください。

本日は、企画展のこぼれ話その②。

 

今回、入り口近くの展示ケースに軍人手帳と戦時日記を展示していますが、そもそもこれら資料をお借りできるきっかけになったのは、前回紹介した『北支転戦記』の後記でこの資料について触れられていたからなのでした。

そこには、

「雑賀町から日中戦争へ出征した二十歳の兵士が、戦地に向かった1937(昭和12)年から8月1日から戦死するまでの百日間がつづられており、その兵士の手帳は奇蹟的に戦友が持ち帰って遺族の手に渡り、現在は雑賀公民館に保管されている」

という内容の山陰中央新報社の記事(2011年8月14日付)が紹介されています。

『北支転戦記』の第4版を編集された曽田幸広さんは、この記事をお盆に読まれ、何か因縁めいたものを感じた、と述べています。

これを読んだ後、雑賀公民館の職員さんに聞いてみたところ、確かにこの資料はあり、公民館のお近くの方が寄贈された、とのことでした。

この資料は、現在同町の松江先人記念館にて保管されているとのことで、早速記念館の資料に詳しい雑賀公民館前館長の福岡修之さんをお尋ねしてみました。

すると、この手帳だけではなく、この手帳の持ち主の山村栄吉さんが使っていた軍服から帽子、コート、出征時ののぼり(前回記事参照。展示中)などが次から次に棚から出され、他にも寄せ書き日の丸、千人針の腹巻、遺言袋、遺品袋なども出てきました。

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今回はあくまで戦争体験記(=本)を中心に展示を考えていたのもあって、お借りしたのはほんの少しですが、再度借用に訪問した際に、福岡さんがニコニコしながら「あんたが興味ありそうだけん持ってきてみたわ」と、さらに当時の雑誌二つを持ってきてくださいました。なんでも、捨てられるところだったのを、縁あって福岡さんのところへやってきた物たちだとか。

それが、今回展示しているのらくろ士官学校の巻(少年倶楽部新年号付録)」と、主婦の友 勝利の体当り生活 (昭和20年)新年号」です。

 のらくろは、当時の少年たちに士官学校がどんなところであるか、またお国のために尽くすことがいかに大事なことか、ということがわかりやすく漫画で表現されています。

主婦の友は、こちらも目次からしてすごい。

・毒獣アメリカ女

・敗けたらどうなるー敗戦国の惨状を見よ―

・空襲下の非常炊飯

・敵弾下の冬の妊産婦と乳幼児防護

・軍国の母顕彰発表

 (一部抜粋)

・・・などなど。

今の主婦系雑誌の特集といえば、断捨離や節約・片付けですが、それとはだいぶ違いますね(当たり前ですが)。

普段目にする雑誌ですらこのような文句が飛び交っていた当時を思うと、今平和な現代で「普通に」雑誌が読めることにホッとします。

実際読んでみると、当時こうして世の中の主婦は戦争や貧しさと戦っていたのかと分かります。逆にこのような雑誌を通して、国家が女性を戦争へと導いていたのかも透けて見えます。

これらの雑誌も展示しています。資料の状態があまりよくないため、手に取ってご覧いただくことができませんが、当時の雰囲気を感じていただければと思います。