「島大と一緒にABDをやりたい」(意訳)
第10回大学図書館学生協働交流オンラインシンポジウムが終わって少し後のこと。
今年度のシンポジウム主管校を務めてくださった梅光学院大学図書館からそんな提案をいただきました。
(シンポジウムへ参加した時のことはこちらの記事をご参照ください。→https://shimadai-lib.hatenablog.jp/entry/2020/12/24/095830)
シンポジウムで島根大学図書館コンシェルジュ(以下、図書館コンシェルジュ)の活動報告を行ったところ、ABDに関心を持ってくれた方が多い印象でした。
梅光学院大学図書館サポーターさんもABDをやってみたいということで、図書館コンシェルジュと一緒にABDを行いたい、またはやっているところを見てみたいという嬉しいお申し出をいただいたというわけです。
(※ABD(アクティブ・ブック・ダイアログ)とは、複数人の参加者で1冊の本を分担して読んで、それぞれが読んだ内容を発表しあい、共有した本の内容について対話を行う、近未来型読書会です。詳しくは過去記事などをご参照ください。→https://shimadai-lib.hatenablog.jp/entry/2019/12/24/102439)
一も二もなく「喜んで!」とお返事をさせていただき……たいところでしたが、「嬉しいですがお時間ください」と三以上はお待ちいただくことになりました。
もちろん、実行するとしたらオンライン開催です。
先方は山口県下関市、こちらは島根県松江市。新型コロナウイルス感染拡大の影響下でなくとも「そうだ、ABDをしに行こう」と気軽に足を伸ばせる距離ではございません。
ですが先立ってのオンラインシンポジウムの成功で、遠方の方々との交流は技術面でも心理面でもハードルが下がったと言えるでしょう。
あとは、図書館コンシェルジュ側の準備次第でした。
2020年度は活動制限がかかったことによって、従来は対面で行っていたイベントを実施することが難しく、ABDもそんな企画の一つでした。
昨年度までは、図書館へ集まって参加者同士で顔を合わせる形でABDを開催していました。
――対面でやっていたABDをオンラインでやるにはどんなやり方がいいのか?
――そもそも、オンラインという条件でABDを実行することが可能なのか?
などなど、企画担当の学生も頭を悩ませていた様子です。
そんな感じで燻っていたところへの、梅光学院大学さんからのお誘いです。
既にオンラインでABDを行っていた方々の体験談などをWebで検索しつつ、担当の学生達へこのお話を相談してみました。
そしたら見事に実行してくれました。
使用するツールはどうするか……?
「え、Zoomって無料のやつだと時間制限があるの?じゃあMicrosoft Teamsで!」
進め方をオンライン対応にするには……?
「ギャラリーウォークとかどないしたらええねん」
PCだけじゃなくてスマホから参加する人もいるかも……?
「スマホだったら要約するのにWord使えないから紙に書いて写真撮ってもらう?」
などなど、学生さんが熟慮を重ねに重ね、オンラインABDの実行計画は練られていきました。
そんなこんなでイメージがある程度かたまった時点で梅光さんにご連絡したところ、すぐに開催の了承をいただくことができました。かくして、オンラインABDは無事に実現する運びとなったのです。
一も二もあり、三、四くらいはお待たせしてしまったにも関わらずご快諾いただき、梅光学院大学図書館の皆様には感謝感謝です。
そして2020年12月12日(土)、図書館コンシェルジュとしては初めての試みとなるオンラインABDが開催されました。
図書館コンシェルジュ側からは5名の参加、梅光学院大学図書館サポーターさん側からは3名ご参加いただき、計8名で実施しました。(その他、観覧のみされる方もいらっしゃいました。)
一人一台の端末(今回は全員PCです)を用いて、島大側は各自の自宅などから、梅光さん側は図書館へ集まっての参加となりました。
今回題材にした本は「ケーキの切れない非行少年たち」(宮口幸治著・新潮新書)です。
こちらは2020年4月に開催を予定して、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止となった回のABD用に選んでいた本でした。
オンラインでABDを実施するにあたって、従来コンシェルジュで行っていたやり方をところどころアレンジすることになりました。
例えば、オンライン開催のネックの一つとなったのが図書自体の共有でした。いつもは用意した一冊の本の実物を分割し会場で配分していたのですが、遠方の方と行うとなると同様にはいきません。
そこで今回は2団体間のみでの開催となりましたので、島大側と梅光学院大学側でそれぞれ図書の実物を用意し、各自で分割して参加者へ配ることにしました。
また普段のやり方だと、本を読んで他の人に共有するために内容をまとめる“コ・サマライズ”の後は、まとめを直接記入した紙を貼りだしていました。
しかし今回はMicrosoft Teamsを用いて組織外の方と一緒に行いましたので、記入物共有の流れとして、各自Wordへまとめを記入したファイルを司会へメールなどで添付し、司会が画面共有で全体へ見せるという形をとりました。(ちなみに司会は、今回のABDの企画立案を担当した学生が務めました。)
そのように多々工夫を凝らしつつ、いざ実際にオンラインABDを開催してみると……。
やっぱり初めての試みです。
機材・回線トラブルが起こったり、ツールの使い方に戸惑ったりと思うようにはなかなかサクサクと進まず、その場でプログラムに変更を加えながらも終了予定時間を少し超過してしまいました。
ですがオンラインでの初めての開催ながらも、一冊の本の内容を参加者で共有して深めあい、学びを得るというABDの目的はしっかりと達成できたのではないかと思います。
次回のオンラインABD開催に向けて、試行錯誤できる点とオンラインでの運営の手ごたえを感じられた会となりました。
今回のABDが実現するきっかけを作ってくださり、進行にご協力いただいた梅光学院大学の皆様も、大変ありがとうございました。
個人的に参加してみての感想ですが、一つの図書というはっきりした話題を共有して対話(ダイアログ)を行う活動であるABDは、オンラインならでは感じる会話の難しさというか、しゃべりづらさが解消されやすいなあと思いました。もともとシャイなので強く感じました。
いつかまた、集合して図書館コンシェルジュのイベントを行うのに支障がなくなれば、対面形式のABDも再開できたらいいなと願っています。
ですが、今回のように遠い街にいらっしゃる方々と、オンラインでABDや各種イベントを通して楽しく交流することも素敵だと思いました。
もしも遠方にお住まいの方などでも図書館コンシェルジュとABDを楽しみたくなった方がいらっしゃいましたら、お気軽にお声掛けください。
P.S.企画担当の学生さんから次回に向けて意欲的な一言をいただきました。
「次回以降オンラインABDを開催する時には、今回よりさらに質の良いものを提供できるように精進します」
【AKG】